五月のある日、信楽作家市の会場で、ふと目に留まった青磁の器は、どこか14,5世紀の韓国青磁をおもわせるところがあるものの、確実にジャパンテイストが注入され、しっとりとした肌合いの美しい青磁だった。
足はその場で釘付けとなり、作者を追うと、まだ、27歳というはつらつとした女性。
お名前を、天野智恵美さんと仰る。
この折りの旅の目的に、新しい青磁の作家さんを探すことがあり、まさか、この地で青磁の器に出会うとは、思ってもいなかったことで、こちらとしては偶然とはいえ、その出会いに感謝した。
作家さん探しの森の中で、どこからかかぐわしい香りのする、深山蓮華に出会ったような嬉しさと言ったらよいのだろうか、姿、カタチも整い、青磁の発色も良く、貫入の入り具合も申し分のない作品だった。
しかもお若いのに、京都伝統工芸専門学校(現・京都伝統工芸大学校)を卒業し、一年間ほど波佐見の窯元で絵付け師として勤務した以外は、すべて独学なのだそうだ。
師弟関係もなく、一人独立独歩の道を歩いてきたという。
アルバイトをしながら生計を立て、朝早くからバイトに向かうまでの時間を制作の時間に当てる。
何を作れば、使って下さる方に喜ばれ、どんな技術で勝負すれば、世の中にみとめていただけるのか・・・あれこれまよいつつ制作し
グループ展、クラフトフェアなど、作品を見ていただける場があれば、積極的に参加する。
そして、昨年の信楽作家市から、バイトを辞め、作家一筋の生活に入られる。
工房は、シェア・アトリエだが、考え、作り、見ていただく生活は、たいへんですけど結構楽しい日々ですという。
そして、今年3月 益子で開催された「陶ISM2014コンペティション」にて一位。
4月には 京都・東山山麓の日吉で開催された「日吉開窯100周年記念コンペティション」にてグランプリを受賞という快挙がつづく。(彩黒色化粧にて)
今、天野智恵美さんは、新進作陶家として、ヒットを放ったという地点にいらっしゃる。
これからがまだまだ山あり谷ありだと思いますが、一つ一つ、楽しみながらがんばってゆきたいと仰います。
残念なことに、グランプリ受賞対象作となった彩黒色化粧の作品は少なく、今回ご紹介できませんが、秋風が吹くころには、何か、お見せできることとおもいます。
今回は、青磁作品の中から、日々の暮らしのなかで使いやすいものをご紹介いたします。
この他、カップやお皿なども追々ご紹介できると思います。
青磁の器は、夏の暑さ凌ぎに重宝致しますが、器の中でも格は高く、新年から一年を通して、いろいろなシーンでお使いいただけるうつわです。
ついこの間、東京へおいでた折りに、天野さんがお店に寄ってくださいました。
その時の天野智恵美さんです~~!
陶刻が愛らしいので、ご紹介しておきますね。